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【洋楽を抱きしめて】レッド・ツェッペリンの

時間:2020-12-23 20:48

 音楽を語る際にどうしても避けられない問題がある。それは温故知新の精神でかつての楽曲に対する深い尊敬や称賛を示す「オマージュ」ともいえる「引用」と、ただ単なる「パクリ」すなわち「盗作」との境界線をめぐってのものだ。
 2020年10月5日、米最高裁は、英国のバンド、レッド・ツェッペリンの1971年の名曲「天国への階段」が米バンド“スピリット”の楽曲の盗作であるかどうかを巡って争われていた訴訟で、盗作に当たらないとの判断を下した。ツェッペリン側が完全勝訴した。
 2014年、スピリットのギタリストだった故ランディ・ウルフ氏の代理人によって「天国への階段」のアコースティック・ギターによるイントロが同米バンドの ’68年の楽曲「トーラス」のイントロに酷似しているとして提訴され、審議が続いていた。
 同じようなコード進行で、特に音階が下がっていくベース・ラインが似通っている、という専門家の指摘を2016年6月23日付『ニューヨーク・タイムズ』電子版は伝えている。
 確かに2つの曲のイントロは聴き比べてみると類似点があるような印象も受ける。
 「天国への階段」の共同コンポーザーであるジミー・ペイジとロバート・プラントは、同曲はスピリットの楽曲とは関係なく創作されたもので、訴訟が起きるまでは彼らは「トーラス」という曲を知らなかった、と主張してきた。
 2016年6月、ロサンゼルス連邦地裁陪審は盗作ではないとの評決を下し、今年3月にはサンフランシスコ連邦高裁が一審判決を支持していた。
 今回の件と並んで音楽業界で最も有名な盗作騒動のひとつは、ジョージ・ハリスンの大ヒット曲「マイ・スウィート・ロード」をめぐるものだろう。
 1971年3月、アメリカの著作権業者が同曲がシフォンズの「ヒーズ・ソー・ファイン」(’63)に酷似しているとしてジョージを訴えたのだ。
 ’75年9月、ジョージに「無意識における剽窃(ひょうせつ)行為」という有罪判決が下った。音符についての議論が何日も続くような法廷論争にうんざりしていた彼は渋々ながら罪を認め、58万7千ドルの支払いに同意した。
 2曲の類似性についてジョージは明確には意識していなかった(「ジョージ・ハリスン自伝」河出書房新社)。彼の曲がラジオで頻繁にかかるようになると多くの人が「ヒーズ・ソー・ファイン」のことを話題にし始め、その時に彼ははじめて「なぜ気づかなかったのだ」と悔やみ、音符をどこかひとつ変えておけば問題はなかったのにと振り返った。
 「オマージュ」と「パクリ」との境界線について他人には判断が難しいということはあろう。しかし、著作権がらみの紛争が法廷に持ち込まれるようなケースでは、たいがい「主人公」であるのはアーチスト自身というよりは、おカネに群がる、似非(えせ)ビジネスマン、似非弁護士たちであるように思えるのは私一人だけであろうか。

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