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編集: admin
いま「お金」を学ぶことの大切さ 不確実な時

時間:2020-12-23 20:51

 人生において切っても切れないものの一つが「お金」だ。ただ、身近でありながら、知っているようで知らないことも多い。今回、ファイナンシャル・プランナーの資格も持つ小島明子さんらが、主に女性に向けた「『わたし』のための金融リテラシー」を発刊。不確実な時代を生きる知恵が得られそうだ。(編集部)

 

   今年は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、想定外の出来事が突然起こり、変化を余儀なくされる現実を目の当たりにした。

 従来にも増して不確実な時代の中で、私たちはどのように生きるべきか、今まで以上に考えさせられる1年だったのではないか。

 そのような外部環境の大きな変化に加えて、女性においては、将来起こりうるかもしれない結婚や出産などのライフイベントに対する不安、仕事と生活のバランスの在り方に対する悩みもつきものである。

 今回発刊した本書は、単にお金の問題だけではなく、将来のキャリアに対して不安を抱えている女性(あるいはそのような女性をサポートしたいという思いもつ男性の方々)のためにまとめられたものだ。

 

将来のキャリアの方向性

 

 第1章では女性がお金を学ぶことの大切さについて整理し、第2章では、女性がライフイベント(給与明細の見方、妊娠・出産・子育てに関する制度や住まいの購入、病気やけが、災害への備え、老後の備えなど)で知っておくべきお金のことについて解説している。私たちの生活とお金への不安はきってもきれない問題であるが、ライフイベントごとにかかるお金のことを知るだけでも、漠然とした不安を減らすことに役立つはずである。

 第3章では、お金の具体的な資産運用の仕方として、外貨預金、投資信託、債券投資、株式投資の手法を学ぶことができる。

 第4章、第5章では、最近話題になっている、環境や社会問題への取り組みを重視する「ESG投資」や、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念を中心とした、新たなお金の流れや社会の変化について解説している。

 そのような社会の変化を知ることは今後の私たちが将来のキャリアの方向性を決める上でもきっと参考になるだろう。

 そして、第6章では、著名な研究者のキャリア理論などを踏まえて、女性に向けた七つのメッセージをまとめている。

 最後に、第6章で取り上げている七つのメッセージのうちの一つを紹介したい。女性に限らず、誰でも人生を生きていれば、思い通りにいかないことはたくさん経験をする。

 特に、企業勤めであれば、希望していない転勤や部署の異動、思い通りに昇進・昇給しないといった話は珍しいことではない。

 

「8割は偶発的なこと」

 

 米スタンフォード大のクランボルツ教授(※)は、「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」というキャリア理論を提唱した。

 これは「個人のキャリアの8割は予測しない偶発的なことによって決定される」とし、その予期しない偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験を積み重ねていくことで、より良いキャリアを形成していく、という考え方である。

 たとえ、自分にとって思い通りにならない予期せぬ出来事が起こったとしても、それを無理に避けるのではなく、当人の主体性や努力によって最大限に活用することがより良いキャリアを拓くことにつながるのである。

 クランボルツ教授は、そのために必要な行動特性として、①好奇心(たえず新しい学習の機会を模索し続ける)、②持続性(失敗に屈せず、努力し続ける)、③楽観性(新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考える)、④柔軟性(こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること)、⑤冒険心(結果が不確実でも、リスクをとって行動を起こすこと)の五つを挙げている。

 私たちは、理解をしていても、いざ行動に移すことは容易ではない。

 しかし、クランボルツ教授が指摘する五つの行動特性を軸に、今起こっていることに前向きに取り組むことができれば、まさに長期的な将来の「何か」をつかむことにつながるのではないだろうか。

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